<裏・赤ずきん>
「お遣いを頼んでもいいかい?」
「はい。何をすればいいの?お母さま」
「おばあさまの所へこれを…」
母親は目の前にやってきた少女に、一つのバスケットを渡すと、それだけを告げた。
少女はそれだけで全てを了承し、ひとつ頷いた。
「わかりました。それでは行って来ます」
少女は薄く微笑んで家を出た。
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木々の間から木漏れ日が入り、清々しい森の中。
一人の少女が歩いていた。
赤い服で身を包み、頭にはすっぽりと同色の頭巾を被っている。
動きに合わせて、三つ編みに結った栗色の髪が揺れる。
手には白い布を被せたバスケットを大事そうに持っていた。
少女は一軒の家の前で足を止めた。
木造のドアを二回叩く。
「あばあさま、私です」
そう言ってから、返事が来る前からドアを開けた。
奥に一つのベッドがあり、布団が盛り上がっている。
其処からふいに声がかかった。
「まぁ、いらっしゃい。よくきたねぇ。もっと近くに来て顔をよく見せておくれ」
少女は言葉に従って、ベッドの隣まで進んだ。
ベッドの中の者は布団で隠れて、目しか見えない。
その目が笑ってこう言った。
「かわいくなったねぇ」
「それは、おばあさまの孫だもの」
少女は笑顔で答えた。
そして前者は再び言った。
「澄んだ目をしているじゃないか」
「それは、私が悪いことをしていないからよ」
さらに明るい笑顔で少女は答えた。
前者は目を細めて言った。
「お前は、いつも赤い服を着ているね」
「それはね・・・」
そう言うと少女はバスケットにかかっていた布を取り、中から何やら光るモノを取り出した。
彼女はそれを振りかざした。
「こういうことをしているからよ。オオカミさん?」
静かに放たれた言葉と同時に振り下ろされた手には、大き目のナイフが握られていた。
ぴしゃりと鮮血が迸る。
その刃は、祖母に化けていたオオカミの首と胴を、分断させていた。
声を出す間もなく、オオカミは息絶えた。
少女は首元にあったナイフを引き抜くと、既に息が無いにも拘らず、今度は腹部を目掛けて
突き刺した。
ほんの少しもぞもぞと動いていた腹が、動きを止める。
少女はくすりと笑うと、バスケットからグラスを一つ取り出し、赤い液体を注いだ。
一口仰ぐと、少女は冷ややかな笑みを浮かべた。
今口に入れた赤い鮮血が、口端から一筋零れ出る。
少女の顔や身体には、多くの返り血が付いていた。
それを気にすることなく、少女は少々と笑い続けた。
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―澄んだ目をしているのは
獲物を逃がさないために
―かわいい顔をしているのは
相手を油断させるために
―服がいつも赤いのは
多くの者を殺したために
返り血が染み付いたから…
<END>
裏・赤ずきん。どうでしたか?天藍さま。
オオカミと赤ずきんの台詞を変えたらどうなるんだろう?
と思って書いたものなんですが・・・。
思い描いてる時点で、赤ずきんが怖くなってきました。
おまえが書いたんだろう!って、ええ、そうなんですけどね。
他のもありますから、これが嫌!ってときは言って下さい。